信用取引を安全に行うコツ
「信用買い」や「空売り」の大きな魅力については前項で説明しました。
信用取引を行う際には、信用取引のルールや仕組みを知って、安全に活用しましょう。
仕組みをあやふやに覚えたままで信用取引を行わないようにしましょう。
最低でも、投資の経験を1年以上は 積んでから始めましょう。
株式投資のこともよく分からずに信用取引を行っても大抵はうまく行きません。
相場の流れ、大衆心理の動き、証券会社の注文システムなどに慣れてから始めるようにしましょう。
目次
最大限に利用しない / 資金に余裕を持って行う
信用取引では約3倍もの資金を利用できると説明しましたが、信用取引に慣れてないうちは、最大限まで利用するのは控えましょう。
株式投資は「余裕資金で行う」のが基本です。
損失分を支払うことができないような運用は絶対にやめましょう!
株式投資を行って「借金が残った!」という事ほど、ばからしいものはありません。
資産が減る可能性はあっても、借金だけは絶対に作ってはいけません。
委託保証金率にもきちんと目配りをしておき、追証発生時にはすぐに対処できるよう余裕資金を持っておきましょう。
信用取引の決済方法
信用取引の決済方法(反対売買)を、きちんと覚えておきましょう。
信用取引で買った(売った)はいいが、その後どうしていいか分からないという恐ろしい話を聞きます。
信用取引の決済方法は、各2種類ずつあります。
差金決済 | 売買による現金での決済方法。 |
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実物決済 | 信用取引ならではの決済方法で、株式を交換します。 |
信用買いの決済方法
決済方法 | 内容 |
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信用買いの銘柄を売る (差金決済) |
最も単純な方法です。 信用買いで購入した銘柄を売って決済します。 |
「現引き」を利用する (実物決済) |
信用買いした銘柄を、現金にて現物の株式へと買いなおします。 信用買いから現物株の保有となります。 現物にすることで金利がかからなくなります。 |
信用売り(空売り)の決済方法
決済方法 | 内容 |
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信用売りの銘柄を買い戻す (差金決済) |
最も単純な方法です。 信用売りで手に入れた銘柄に買い注文を出し決済します。 |
「現渡し」を利用する (実物決済) |
信用売りした銘柄を、すでに保有している現物の株式と交換します。 保有株は減り、信用売りにより借りていた銘柄が返済されます。 |
信用取引の種類による決済方法
決済方法 | 内容 |
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制度信用取引 | 返済期限は6ヶ月と決まっています。 6ヶ月が経つと強制的に決済されますので注意しましょう。 |
一般信用取引 | 各証券会社が定める期限で返済します。 無期限のところもありますが金利などに注意しましょう。 |
信用取引は各項目をしっかりと事前に理解した上で行ってくださいね。
ロスカットは早めに対処しましょう
ロスカット=「損切り」 は確実に こまめに行いましょう。
早い段階で見切りをつけないと「追証」の危険性や返済期限の切迫により、思ったような取引ができなくなります。
自分でロスカットできない方は自動売却で下落時などに売却してくれる「逆指値」や自動売買が利用できる証券会社にて取引を行いましょう。
信用倍率とは?
「信用倍率」とは信用取引で使われる専門用語です。
貸借残で見る貸借倍率や取組倍率も同じような意味です。
信用倍率とは信用取引における「信用買い」と「信用売り(空売り)」のバランスを数値で表したものです。
信用倍率 = 信用買い残 ÷ 信用売り残
各銘柄における「信用買い残」と「信用売り残」は、証券会社などで確認できます。
右図はマネックス証券における信用取り組みの表示例です。
(信用倍率は取組倍率と表示されています。)
信用倍率の見方
一般的には、信用買い残の方が信用売り残よりも多くなります。
(例)信用買い残 500 : 信用売り残 100
信用倍率 = 500 ÷ 100 = 5(倍)
対して、信用売りは「この銘柄はこれから下がるだろう」と予測して株券を借りて売ります。
相場が下げ相場の状態にあると、そういった予測も入り信用売りが増加する場合があります。
(例)信用買い残 500 : 信用売り残 800
信用倍率 = 500 ÷ 800 = 0.625(倍)
信用倍率が1倍以上ある状態が通常なのですが、相場環境やその他の状況により信用倍率が1倍を切る場合があります。(信用で買う人よりも信用で売る人が多くなっている状態)
信用取引は必ず反対売買を行う必要があります。
(信用買い残が1,000株あれば、将来的に1,000株売られます)
ワンポイント
- 信用買い残(信用倍率が大きくなる)が増える
将来の売りの要因になる。
⇒ 株価の下落要因となる可能性 あり - 信用売り残(信用倍率が小さくなる)が増える
将来の買いの要因になる。
⇒ 株価の上昇要因となる可能性あり
信用倍率のポイント
先ほど述べたとおり、通常は信用倍率が1倍以上あるのが普通です。
ところが、相場環境やなんらかの状況により信用倍率が1倍以下、または1倍に近い場合は「好取組銘柄」と呼ばれ注目を浴びることがあります。
信用売り残が多い状況ということは、反対売買により将来的に買われる可能性が高くなっているからですね。
信用売り(空売り)は買いがどんどん集まると、大損する可能性があるので、「踏み上げ相場」(空売りを仕掛けた人たちが買い戻すこと)により、一気に株価を上げる場合があります。
ただし、いつ買い戻されるかはわかりませんし、下げているのには何らかの理由がありますので、そこら辺を見極めなければなりません。
あくまでも、売買のタイミングを見計らう指標の一つとして信用倍率があります。
逆日歩とは?
逆日歩(ぎゃくひぶ)は、信用取引を行う上で是非知っておきたい専門用語です。
知っておかないと損をしてしまう可能性が高いです。
信用売りができるまでの流れ
逆日歩の説明の前に「信用売り(空売り)」の流れを確認しておきましょう。
信用売りは「投資家」が「証券会社」から「株を借りて」取引を行う取引法です。
では、証券会社は「どこ」から「貸す株を調達」するのでしょうか?
「日証金」や「機関投資家」から借りている
各証券会社でも「貸せる株」を保有していますが、限度があります。
売り残が買い残を上回った場合、「貸せる株」が不足しているので「日本証券金融株式会社(日証金)」というところから、「貸す株」を調達する必要があります。
ところが、貸す株が増え続けると「日本証券金融株式会社」までもが株不足に陥るときがあります。
その際、足りなくなった株を調達するために、大量に対象株を保有している銀行等の「機関投資家」などから「株を借りて調達」します。
借りる以上、その機関投資家等に対して「品貸料(借り料)」を支払う必要があります。
この「品貸料」を株を借りている投資家に負担してもらう手数料を「逆日歩」といいます。
ごくごく簡単に説明すると・・・
信用売り(空売り)している投資家のみなさんへ。
もう手元に貸す株がありません。
他から株を調達してきたら品貸料をとられました。
株を借りている みなさんも品貸料を負担して下さいね。 (・∀・)ニャーヒャッヒャッヒャ
というのが逆日歩です。※注:もちろん上記のように意地悪ではありません。そういう仕組みです!
逆日歩で損をする可能性がある?
逆日歩の恐ろしいところは、その日の取引が終わってみるまで、どの程度 信用売りが出て、どの程度 株が足りないのかが 事前に分からない点にあります。(翌取引日の午前10時過ぎに分かります)
もちろん、まったく動きが分からないのではなく、対象銘柄の「信用倍率」の推移を見てれば、信用売りが増えてきたなど ある程度は把握することができますが。
同日中に決済した銘柄については逆日歩は発生しませんが、数日以上にわたって逆日歩が発生した場合は、持ち株に応じた手数料(逆日歩)を支払います。
参考までに
「逆日歩 2円」が発生し、1,000株を信用売りしていた場合は 1,000株×2円で2,000円の逆日歩を支払う必要があります。
ここまではお分かり頂けると思います。
ややこしく、思いがけない損をしてしまうかもしれないのは次の仕組みです。
逆日歩の日数計算は、信用売り建ての受渡日から、返済の受渡日の前日となります。
曜日 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
新規建 | 約定日 | 受渡日 | 休み | 休み | |||
返済 | 約定日 | 休み | 休み | 受渡日 | |||
逆日歩 | 3日分 | ||||||
金利・貸株料 | 4日分 |
ここで気をつける点は、株の受渡日は3営業日後になるということです。
分かりづらいと思いますので下記の図をご覧ください。
逆日歩の日数計算
逆日歩2円で1,000株を信用売りした場合。
- 信用売り建ての受渡日:21日。
- 返済の受渡日の前日:22日。
逆日歩は、1,000株×2円(逆日歩)×1日(逆日歩日数)=2,000円になります。
逆日歩の日数計算(土日を挟む場合)
逆日歩2円で1,000株を信用売りした場合。
- 信用売り建ての受渡日:23日。
- 返済の受渡日の前日:26日。
逆日歩は、1,000株×2円(逆日歩)×4日(逆日歩日数)=8,000円になります。
ポイントは「営業日」という点にありますので、連休などで証券取引所が休日になる場合は特に注意が必要です。
逆日歩の金額も一定の金額ではなく、株の不足度に応じて変動します。
つまり、逆日歩がついた銘柄を長く持つ場合は、その変動リスクも考慮する必要があります。
ワンポイント
SMBC日興証券で ビッグデータを活用し、逆日歩を予報するという面白いサービスが2017年12月22日に誕生しました。詳しくは下記にて説明しています。
逆日歩が発生すると買い戻しも増える
逆日歩は投資家にとっては、払いたくない手数料です。
逆日歩が発生しそうになると、対象銘柄を手放す投資家が増えます。
「株を買う」という「買い戻し」が発生し、株価が上がっていきます。
株価が上がると信用売り(空売り)をしている人は、含み損失が増えていきます。
それを嫌がりさらに買い戻しが発生していきます。
このように空売り銘柄が買い戻され、どんどん株価が上がっていく事を「踏み上げ相場」といい、空売りをしている人は大損をする可能性があります。
貸株注意喚起銘柄になると注意!
貸株注意喚起銘柄とは、証券金融会社が空売りに関する注意喚起を行っている銘柄です。
- 空売りが増えていますよ。それに伴う貸株も増えてますよ。
- 今後 逆日歩が発生する可能性がありますよ。または空売り禁止になりますよ。
といった注意喚起を行っています。
マネックス証券の場合、銘柄の横に赤文字で注意と表示され、クリックすると内容が書かれています。
ビッグデータで事前予測!逆日歩予報
SMBC日興証券で ビッグデータを活用し、逆日歩を予報するという便利なサービスが誕生しました。
SMBC日興証券に口座を開設していれば無料で利用することが可能です!
2017年12月22日にお試し版として提供されていましたが、2018年5月25日に正式サービス版として公開されました。正式サービスに伴い、配信頻度や精度が向上しています。
過去の膨大な市場データを収集しビッグデータを解析。
逆日歩の発生確率を予報するというサービスです。
配信タイミングは1日3回になります。
- 【引速報】前日17:10頃
大引け時点で得られるデータを利用し、逆日歩を予測 - 【前日報】前日20:10頃
貸借取引残高情報を織り込み、逆日歩を予測 - 【当日報】当日12:40頃
当日始値や前営業日の逆日歩情報を織り込み、逆日歩を予測
逆日歩を予報は検索も可能です。
決算月や市場にて絞り込みを行ったり、逆日歩の発生確率が高い順/低い順などの項目の並び替えも可能になっています。
信用売り(空売り)では損失リスクの高い「逆日歩」に注意をする必要がありますが、そちらを予報してくれるサービスはリスクの軽減につながりますので、非常に便利です。
カブスル限定のお得な口座開設タイアップ企画を行っています。