投資初心者が押さえておきたい運用報告書や評価損益明細書などの読み方

「ほぼ金利ゼロの銀行預金ではお金がほとんど増えない、しかし、株式は騰落幅が大きいのであまりリスクも取りたくない、またどの銘柄に投資して良いのか?」

など、投資がまったく初めての人にとっては、どのように投資するのか解らないのが現実です。

今年から始まっている新NISAには、株式や投資信託が投資対象となる「成長投資枠」投資信託が投資対象となる「つみたて投資枠」の2つの運用コースがあり併用も可能です。

2つのコースは、いずれも投資信託による運用が可能ですが、投資信託は初めて投資を検討する人にとって、ハードルがやや低い金融商品といえます。

ここでは、主に投資信託に限定した「つみたて投資枠」について紹介します。

投資信託の運用に関する基本的な知識と良いファンドを見分けるために、また投資家個人の運用成果を理解するために「純資産総額」や「基準価額」などの最低限抑えておきたい基本的な投資用語についても分かり易く解説していきます。

初心者向きの「つみたて投資枠」コースについて

投資信託のきほん

初心者向きの「つみたて投資枠」コースで購入可能な金融商品は、主に投資信託です。

投資はものを買うと同じで大事なお金を支出することに変わりはありません。

「投資信託とは、投資家から集めたお金をまとめて資産運用のプロが株式や債券などに分散して投資し、その運用成果を投資家に還元する金融商品」で、その数は約6,000本超(投資信託協会の調査)といわれています。

投資信託に関する用語とその仕組み

ここでは、投資信託を購入する際、あまり馴染みのない用語が多くでてくるので、これらに関する仕組み、計算方法、特徴などを理解しておくと投資信託(以下、ファンド)がより身近なものになります。

投資信託の商品カテゴリー

このカテゴリーは、つぎのように分類されます。

・ 国内・海外の債券に投資したファンド

・ 国内・海外の株式に投資したファンド

・ 国内・海外の不動産投信(リート)に投資したファンド

・ コモディティに投資したファンド※

※商品先物市場で取引される原油、金・銀、大豆・小麦などの商品

など、同じ商品カテゴリーを組み合わせたファンドです。

バランスファンド

これは、上記のさまざまな商品カテゴリーをバランス良く組み合わせて投資したファンドのことをいい、異なる商品カテゴリーを分散投資することで運用リスクの低減や運用収益の確保を目指します。

運用方法はアクティブ型とインデックス型

これらの商品カテゴリーの運用方法は、アクティブ型とインデックス型が主流です。

本数ベースでは、圧倒的にアクティブ型が約9割を占めています。

インデックス型は、日経225、TOPIX、S&P500などの(※株価指数に可能な限り近い水準の運用成果を目指す)指数連動タイプのファンドです。

このタイプは、運用の専門家の力量は関係なく市場の値動きをウォッチするだけでファンドの運用効果がわかるため、投資のハードルも低く、コストも安く抑えられるのが特徴です。

アクティブ型は、(※株価指数を基準として、それを上回る運用を目指すタイプ)積極的利益追求型ファンドです。

このタイプは、運用の専門家の力量によって運用成果に影響を及ぼします

また、投資家が負担するコストは、運用のプロが業務に携わっている分手間がかかるため、インデックス型より高めです。

※株価指数は市場全体や特定銘柄をグループ化して、それらの株価を数値化したものです。

例を用いて解説します

純資産総額

ファンドに組入れている全ての株式・債券・リートなどのその時点の値段(時価)の総額に株式の配当金や債券の利子または売買益などの収入を加え、ファンドの運用にかかわるコストや支払い分配金などを差し引いたものをそう呼びます。

たとえば、ABCファンドを購入した投資家の資金合計額100億円を元に運用のプロがこのファンドに組入れているA株式とB株式の2銘柄を下表のように購入すると仮定した場合

スタート時点の純資産総額は100億円でしたが、6か月後の純資産総額は、2銘柄の株価が上昇および配当金収入により17億円増加の117億円となっています。

※実際の計算は毎日行われます。株価以外の項目は、計算の便宜上、6か月間の累計額で表示しています。

また、この期間中は再投資ゼロと仮定して試算しています。

一般的に、純資産総額が多いほど人気のあるファンドです。

また、その額が多いほど運用コストが低く抑えられるなどの利点もあります。

そのほか、買付けたファンドの純資産残高が急激な減少や減少傾向の場合は、資金の流失による運用不足の可能性もありますので、その推移を「運用報告書」やネットなどで定期的にウォッチしておくことも大事です。

口数

口数とは、運用収益などを受取れる権利(受益権)を表す単位であるとともに、ファンドの購入や売却する取引単位としても使われます。

また、ファンド全体の口数は1口当たり受益権総口数と投資家が保有する口数も1口当たりで表示されます。

基準価額

基準価額ファンド全体の1万口当たりの値段で、ファンドの購入や売却時の取引に適用される価額をそう呼びます。

これは、仕組みなどは異なりますが株式投資の株価に当たるものがこの価額です。

ただ、基準価額は、常に変動する株価と異なり、1日に1回算出されます

たとえば、ファンドの運用スタート時点において、口数1口に対し1円とするため、1口当たりの基準価額は1円となりますが、通常、1万口当りの価額で表示されるので、一般的なファンドの基準価額は1万円からのスタートとなります。

したがって、上記例のABCファンドの (1) スタート時点の基準価額は1万円となります。

計算式は、純資産総額100億円÷(総口数100億口÷1万口)

また、(2) 6か月後の時点の基準価額は1万1,700円となります。

計算式は、純資産総額117億円÷(※総口数100億口÷1万口)

※再投資はなかったと仮定しているので口数は変わりません。

取得単価

取得単価は個別元本とも呼ばれ、投資家がファンドを買い付けした時の値段のことを指します。

計算式は、投資額(追加投資も含む)や分配金の再投資額の総額を保有している総口数(再投資後)で割り、個別の損益は基準価額との差異で求めます。

Aさんは下記の条件で次のとおり新NISAの「つみたて投資枠」コースを2月から始めました。

Aさんの3月末の取得価格は以下のとおりです。

分配金

分配金とは、ファンドに組み入れた株式や債券などから得た配当、利子などの収入および売買益などを原資として投資家に還元するお金です。

分配金には、基準価額が個別元本を上回った部分の金額を普通分配金(課税対象)、基準価額が取得価格を下回った部分の金額が特別分配金(非課税対象)と呼ばれています。

「つみたて投資枠」の場合は、分配金を受取る方法と分配金の再投資する方法があります

分配金の再投資は、複利効果が期待できるメリットがあります。

ただし、分配金の再投資は、新な投資とみなされるため、例えば、年間の投資上限額(120万円)を超えた場合、その分は課税口座での買付となるデメリットもあります。

コスト

投資信託は、ファンドの買付時に販売手数料、保有時に信託報酬・監査報酬等、売却時に信託財産留保額など、さまざまなコストが掛かってきます

これらのコストはファンドを選択する際に大きなポイントの一つになります。

なぜならば、保有時にかかる信託報酬(運用管理費)や監査報酬などの管理コストは、毎日基準価格が更新される度に純資産から控除されているため、全体が把握しづらく、負担額によっては運用成果を左右することも考えられるからです。

ただし、「つみたて投資枠」コースの場合は、販売手数料が無料となっている他、信託報酬もインデックスファンドが多くを占めることもあり、年率0.5%以下(一般的には1%前後の料率)を目指すとしているなど、コスト面ではかなり有利です。

損益の読み方

ここでは、(表-2)で記載しているAさんの「つみたて投資枠」コースの運用成果(2か月間)を表しています。

評価損益は利益となっていますが、この時点ではファンドを売却していないので、含み益(未だ実現していない益)の状態です。

この損益は毎日更新されますので、NISA口座を保有している金融機関のホームページ等で定期的に確認することをお勧めします。

新NISAで取扱っている対象商品は?

新NISAで指定されている対象商品(ファンド銘柄)は、一定の条件を満たした「成長投資枠」約2,000本に対して、長期の積立て、分散投資に適した「つみたて投資枠」約280本です。

特に、「つみたて投資枠」で取扱っている対象商品は、金融庁が定めるいくつかの条件を満たしている次のようなファンドです

・ 株式が組入れられているファンド

・ 信託期間が無期限または20年以上のファンド※

・ 販売手数料が無料(ノーロード)のファンド

・ 毎月分配型ではないファンド

・ 信託報酬(運用管理費)が低額なファンド

※投資信託の運用が開始される日(設定日)から運用が終了し、投資家に運用資金が返済される日(償還日)

までの期間のことです。

などです。

「つみたて投資枠」コースで取扱っている商品カテゴリーの運用方法は、一般の投資信託と異なり、リスクやコストが低い初心者向きのインデックス型が約80%を占めています。

このコースは、100円からの少額投資(主にネット証券)も可能です。

投資初心者は、まずこのコースからスタートすることも選択肢の一つとして検討することをお勧めします。

著者の紹介

小林 仁志(こばやし ひとし)

小林 仁志(こばやし ひとし)
https://officeaport.web.fc2.com/

オフィスアセットポート 代表

山梨県生まれ。電器メーカーに入社後本社および米国・シンガポール・マレーシア等の事業所に勤務。在職中は財務経理を中心に総務人事・経営戦略・内部監査等の職種を経験したほか、同社の子会社監査役を務め2011年退任、2012年4月より独立系FPとして事業活動を開始。専門分野においては、特に団塊世代の年金・医療保険・税金等のリタイアメントプランや旅行とお金のプラン、住宅ローンや保険の見直し、株式・投資信託等の資産運用など。

【保有資格】
CFPR認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、総合旅行業務取扱管理者、登録ロングステイアドバイザー(ロングステイ財団)、他


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