年間で大損したら確定申告を検討しよう!
みなさん、今年は利益を得られそうですか?
「損失でてるよ!この野郎!」と思われた方。すみません m(_ _)m
年間で損失を出した場合、
確定申告をすると節税になるかもしれません!
という「損失の繰越控除」に関する話です。
初心者向けに分かりやすくザックリと解説します。
目次
確定申告とは?

確定申告とは、国民が1年間における所得を国に自主的に申告して、所得内容によって国に納める税金(所得税)を決めるものです。
所得を得た翌年の2/16~3/15の間に、税務署に「申告書」を提出します。
2021年(2020年分)の申告時期は、2月16日(火)~4月15日(木)です。(一ヶ月間延長)
所得税(確定申告書等作成コーナー)by 国税庁
サラリーマンの場合、「源泉徴収」と「年末調整」によって会社が代わりに税金を納めてくれているので、自分で確定申告をしたことがない人も多いかもしれません。
さて、株式投資もこの「確定申告」と関係があります。
なぜなら、投資によって得られた利益は申告が必要な「所得」のひとつだからです。
ワンポイント
証券会社で口座開設すると「特定口座 源泉徴収あり」と「特定口座 源泉徴収なし」を選択できます。
「源泉徴収あり」を選んだ方は「証券会社が代わりに税金を税務署に収めている」ので、確定申告を自分で行う必要がありません。
ただし、「確定申告する必要がないだけ」で、申告することは可能です。
こちらで紹介しますが「源泉徴収あり」でも確定申告を行った方がお得な場合があるので、ぜひともチェックしてみてください。
「特定口座 源泉徴収なし」の場合、サラリーマンでも年間で20万円以上の売却益が出たら確定申告を行う必要があります。詳しくは下記をご確認ください。
株で確定申告が必要な場合は、下記の記事にて詳しく紹介しています。
確定申告で「損益通算」すると得になるケースがある
大きな損失が出ている場合、確定申告によって得になるケース(節税)があります。
確定申告をすることで、複数の証券会社の損益通算ができます。
損益通算とは、利益と損失を相殺することです。
参考までに
たとえば、A証券会社で利益が出ていて、B証券会社で損失が出ている場合を考えてみましょう。
この場合、確定申告を行うことでA証券の利益とB証券の損失を損益通算(利益と損失を合算して税金が安くなる)することができます。
- A証券 +20万円。
- B証券 -10万円。
確定申告を行うと年間の利益は+10万円に。
損益通算で利益が圧縮されるので、収める税額が減ります。
損失が利益を上回っていたら、税金はゼロに。
このような場合がありますので、特定口座 源泉徴収ありの方も、年間損失が大きければ、確定申告を検討してください。
特定口座内の損益通算は、自社内のみで行われます。
複数の証券会社の損益通算は行うには、確定申告が必要です。
年間で損失が出ている場合は「繰越控除」ができる
年間損益がマイナスの場合、源泉徴収の あり/なし に関わらず 確定申告を行う必要がありません。
でも、確定申告を行うことで
損失を翌年度以降に、「最長で3年間 繰り越す」ことが可能
となり、得をする(節税になる)可能性があります。
この制度を「損失の繰越控除」といいます。
カブスルはリーマンショック時(2008年)に損失を出し確定申告。繰越控除を利用しました。
損失を繰り越す???
「損失を繰り越す」なんて言葉は、意味が分りづらいですよね。
カンタンに言えば、今年の「損失」を、翌年以降の「利益」と「相殺」することができるんです。
たとえば、
ワンポイント
- 2020年 年間の売却益 -50万円
- 2020年の確定申告を行う。(損失の繰越)
- 2021年 年間の売却益 +80万円
- 2021年の確定申告を行う。
- 繰越の適用(相殺) +80万円 -50万円 = +30万円。
- 2021年の売却益は繰越控除により +30万円とみなされる。
2020年から繰り越された50万円の損失が、2021年の80万円の利益と相殺され税金が減ります。
参考までに
(例)税率が20%の場合。
- 繰越控除をせずに+80万円の場合。
80万円 × 20% = 16万円 - 繰越控除によって+30万円の場合。
30万円 × 20% = 6万円
どうでしょうか?
「損失の繰越」のおかげで 10万円も税金が安くなりました。
しかも、繰越控除を利用すると、損失を「3年間」繰り越せます。下記、例です。
ワンポイント
- 2020年 年間の売却益 -100万円
- 2020年の確定申告を行う。(損失の繰越)
- 2021年 年間の売却益 +30万円
- 2021年の確定申告を行う。
- 繰越の適用(相殺): +30万円 -30万円 = 0円。
- 2021年の売却益は損失の繰越により 0円とみなされる。
- 2020年の-100万円から-30万円分を相殺。損失の繰越の残りは-70万円。
- 2022年 年間の売却益 +50万円
- 2022年の確定申告を行う。
- 繰越の適用(相殺): +50万円 -50万円 = 0円。
- 2022年の売却益は損失の繰越により 0円とみなされる。
- 2020年の残りの-70万円から-50万円分を相殺。残りは-20万円。
- 2023年 年間の売却益 +50万円
- 2023年の確定申告を行う。
- 繰越の適用(相殺): +50万円 -20万円 = +30万円。
- 2023年の売却益は損失の繰越により +30万円とみなされる。
各年の税金を計算すると、
- 損失の繰越をしている場合
30万円 × 20% = 6万円の税金が発生。 - 損失の繰越をしていない場合
3年間で130万円の利益がでているので、
130万円 × 20% = 26万円の税金が発生。
どちらがお得かは一目瞭然ですね (  ̄∇ ̄)
損失を繰り越すには確定申告が毎年必要
損失の繰越控除は、最長で3年間繰り越すことができます。
なお、繰越控除を適用するには確定申告が必要です。
さらに損失を繰り越す期間は、連続して確定申告を行う必要があります。
最大で3年間繰越控除を受ける場合、4年連続で確定申告が必要になります。
取引がない年も確定申告が必要です。
なお、繰越控除を受ける必要がないのであれば、確定申告は必須じゃありません。
注意!健康保険料が増額される可能性がある
では、損失が出たら確定申告がお得なんだね?
損失の繰り越し自体は、節税になるお得な制度ですが確定申告を行ったら「全体的に見てお得かどうか」は難しい判断です。
確定申告によって損益通算すると、投資によって得られた所得が、給与や公的年金などの他の所得とともに、保険料の算定対象に含まれることになるからです。
問題になりやすいのは健康保険料
問題になりやすいのは健康保険料です。
確定申告を行うことで、株式投資で得た所得が一般の所得に加算されて「国民健康保険料」など健康保険料の算定対象になってしまいます。
すると、年間の国民健康保険料が大きく上がってしまう方もいます。
また 保育料や高額療養費、児童手当やその他の行政給付などに影響が及ぶ可能性もあります。
扶養に入っている場合などは、所得金額により扶養から外れる場合があります。
税額上の還付分 < 保険料等の増額分などが上回る
確定申告により上記の構図になれば、結果的に損をします。
損失額や還付される税額の金額、加入している健康保険の種類、その他の行政手当の受給状況などにより確定申告がお得か損か分かれると思います。
得になるか損になるかはケースによって異なるので、税務署、税理士さんなどの専門家に相談してください。
確定申告時期が近付くと無料相談会が開催される場合が多いです。
なお、人気があるので出来れば無料相談会前に税務署で聞いた方がいいと思います。
NISA口座の損失は繰越控除の対象外
NISA口座やジュニアNISA口座の譲渡損失は、繰越控除の対象となりません。
意外と知られていない損失の繰り越し制度
今回は「損失」という 嫌~なお話でしたが、実はコレ、知っておいた方がよい話です。
確定申告をすれば損失を3年間繰り越せる
この特例はとっても役に立つ制度です。
みなさんは手元に「塩漬け株(みなし損失)」はありませんか?
塩漬け株というのは、損失が出ている銘柄の回復を待って保有している株のことですが、売ることができず投資資金が凍結されている状態です。
思い切って売却して損失を確定することにより、資金は解放され、その損失は最大で3年間、その後の利益と相殺(節税)できます。
回復が思わしくない塩漬け株は売ってしまって資金を作り、新しい株を買った方が、より良い投資ができるキッカケになります。
参考までに
損失が出ていた方で「損失の繰り越し控除」の申請をしていなかった方。
「確定申告」自体をしていなかった場合、前年から3年分をさかのぼって「期限後申告」が可能です。期限後申告するときは、お近くの税務署にお問い合わせください。
ただし、上記で紹介したとおり、場合によっては保険料などの関係で全体的に損する場合もありますのでご注意を。その場合、住民税と分けて申告する方法などを検討してみてください。
今回の記事は専門的な知識が必要な個所が多かったので、元弁護士で法律ライターとして ご活躍されている福谷陽子さんに監修・加筆して頂きました。
監修者プロフィール

元弁護士、法律ライター「福谷陽子」さん
京都大学法学部在学中に司法試験に現役合格。
1年修習期を遅らせて海外旅行などをした後、弁護士登録。
10年以上の間 弁護士として毎日裁判所に提出する専門文書を作成。
7年間事務所経営しており、経営や税金にも詳しい。
税理士業務に関する記事も多数執筆。
カブスル限定のお得な口座開設タイアップ企画を行っています。