株式投資で確定申告が必要な場合は?
株式投資において、確定申告が必要なケースを紹介します。
1つの証券会社で取引をしている方は、下記のチャート図で確定申告が必要になるのか確認してください。
2つ以上の証券会社で取引を行っている場合でも、「特定口座 源泉徴収あり」で取引している方は原則確定申告は不要です。
ただし、A証券会社で利益、B証券会社で損失が出ているケースなど、証券会社ごとで損益が発生している場合については、確定申告をすることで損益通算を行う(節税)こともできます。のちほど詳しく説明
監修者プロフィール
こちらの記事はカブスルが書いた原稿を基に、元税務署職員の平井 拓さんに監修・リライトを行って頂きました。
平井さんはマネーの達人で税金に関するコラムを執筆されています。
初心者にも分かりやすいコラムが人気ですので是非チェックしてみてください!
目次
確定申告とは?
確定申告は、国民が1年間で発生した所得を計算し、所得金額に応じて算出された税金を国へ納める手続きをいいます。
確定申告は納税者が自主的に行わなければならず、確定申告書は所得を得た翌年の2/16~3/15の間に税務署へ提出しなければなりません。
2023年分(令和5年分)の申告時期は、2024年2月16日(金)~3月15日(金)です。
所得税(確定申告書等作成コーナー)by 国税庁
できれば早めに準備されるのをおすすめします。
- 書類の不備に早く気づく(特定口座年間取引報告書はありますか?)
- 税務署などで相談したい場合、2月の方が混雑を避けられる
会社員や公務員の場合、勤務先の会社等が「源泉徴収」と「年末調整」により税金の支払い及び精算をしてくれるので、確定申告をしたことがない人も多いかもしれません。
しかし、株式投資は年末調整の対象外となっているため、投資によって得た利益については申告が必要になる可能性があります。
ワンポイント
証券会社で口座開設すると「特定口座 源泉徴収あり」と「特定口座 源泉徴収なし」を選択できます。
「源泉徴収あり」を選んだ方は、証券会社が代わりに税金を税務署に納めてくれるため、基本的に確定申告をしなくても問題ありません。
一方、「特定口座 源泉徴収なし」を選んだ方は、サラリーマンでも給与所得や退職所得以外の投資や副業からの年間所得(利益)の合計が、年間20万円以上であれば確定申告を行う必要があります。
株式の売却益や配当金にかかる合計税率は20.315%
株式の売却益にかかる、合計税率は20.315%です。
- 所得税 15%
- 住民税 5%
- 復興特別所得税 0.315%
※復興特別所得税は2037年12月末まで発生。
配当金にかかる税金は、配当金を支払う会社が上場会社に該当するかなど、条件によって異なります。 上場会社からの配当金であれば、税率は原則20.315%ですが、非上場会社等からの配当金に対する税率は最大55.945%になるのでご注意ください。
特定口座と一般口座の違いは?
証券会社の口座には、特定口座と一般口座の2種類があります。
特定口座についても、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」があり、「源泉徴収あり」を選択すれば、自分で確定申告する必要がありません。
口座の種類 | 源泉徴収 | 確定申告 |
---|---|---|
特定口座 | あり |
確定申告の必要なし!(自分でしてもOK) 証券会社が税務署に税金を納めます。(源泉分離課税) 売却益を得る度に証券会社が税金分を徴収し、あなたの代わりに税金を納めます。 |
なし |
給与所得や退職所得以外の投資や副業からの年間所得(利益)の合計が、
|
一般口座で株式投資を行うことも可能ですが、ほとんどメリットがありません。詳しくは下記の記事をご参照ください。
「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の違いについて
「源泉徴収」とは、証券会社が利益に対する税金を天引きして税務署に納める制度をいい、源泉徴収の「あり」と「なし」を選べるのは特定口座のみです。
「特定口座 源泉徴収あり」を選択すれば、証券会社が代わりに税金を納めますので、利益が発生した場合でも基本的に確定申告手続きは不要です。
年間取引報告書について
特定口座を開設すると、「年間取引報告書」を自動で作成してくれます。
口座の種類 | 年間取引報告書 |
---|---|
特定口座 | 証券会社が自動で作成してくれる。 完成した年間取引報告書は発送してもらえる。 取引が頻繁でも楽チン |
一般口座 | 確定申告を行う場合、すべて自分で作成する必要がある。 取引を頻繁に行う方は計算などが大変 |
年間取引報告書は、各証券会社で閲覧・印刷・ダウンロードが可能です。
作成される時期は証券会社ごとに違いますが、翌年1/4~1/15の間に作成されるケースが多いです。
一般口座は年間取引報告書が作成されませんので、利用者が自分で損失や利益を計算します。
各証券会社の年間取引報告書をエクセルに入力することで、各年の実績などをデータとしてみられるエクセルを無料配布しています。
複数の証券会社で取引されている方は、年間取引報告書の管理エクセルがあると、入力漏れなどに気づきやすくなります。
確定申告する証券会社は自分で選べます。
NISA口座とは?
NISA口座は、譲渡益や配当金等が非課税となる口座なので、利益が発生しても確定申告は不要です。
一方で、損失が生じた場合においても、確定申告をすることができない点にはご注意ください。
- NISAのメリット
- 新NISA(2024年以降)
年間360万円(最大1,800万円)分までの投資額に対する譲渡益や配当金による税金が0円 - 一般NISA(2023年まで)
年間120万円分までの投資額に対する譲渡益や配当金による税金が0円 - つみたてNISA(2023年まで)
年間40万円分までの投資額に対する譲渡益や配当金による税金が0円
- 新NISA(2024年以降)
- NISAのデメリット
利益と損失の損益通算ができない
NISAにつきましては、参考記事で詳しく説明しています。
複数の証券会社で損益が出ている場合は?
1つの証券会社だけではなく、複数の源泉徴収ありの特定口座で取引している場合、確定申告で損益通算をすることで税金が戻ってくる場合があります。
損益通算とは年間の利益と損失を合算する方法です。利益が圧縮されるので節税に
譲渡所得税は売却利益に対して課される税金ですので、損益通算をしたことで利益額が小さくなくなれば、その分支払うことになる税金は少なくなります。
特定口座を選択している場合、口座内の売買による損益は証券会社が計算してくれますが、複数の証券会社で取引しているときは、確定申告で損益通算をしなければなりません。
【損益通算が有効なケース】
- A証券会社で「利益」が出ている
- B証券会社で「損失」が出ている
ワンポイント
- 特定口座は、株式投資の売買における利益と損失を自動で相殺してくれる
(配当金の損益通算は源泉徴収ありを選択した場合) - 他の証券会社との損益通算をするためには確定申告が必要
(確定申告をしなければ損益通算されません)
確定申告(損益通算)をしない場合
- A証券会社で20万円の利益が出ている。
20万円×20.315%(税金)=40,630円を証券会社が代わりに徴収して納税。 - B証券会社で8万円の損失が出ている。
マイナスなので納税額はゼロ。
A+Bの合計で、40,630円の税金が発生。
確定申告により、A証券の利益をB証券の損失で相殺(損益通算)すると、税金の還付が受けられます。
確定申告(損益通算)をする場合
- A証券会社で20万円の利益が出ている。
20万円×20.315%(税金)=40,630円を証券会社が代わりに徴収して納税。 - B証券会社で8万円の損失が出ている。
確定申告で損益を相殺
(20万円-8万円)×20.315%(税金)= 24,378円。
A+Bの合計で24,378円の税金が発生。
A証券で多く徴収された分(16,252円)が確定申告で還付される。
先に納めている税金がある場合、確定申告で損益通算をすることで、納め過ぎていた税金が戻ってきます。
ただし、一般口座や特定口座(源泉徴収なし)の取引については、先に税金を納めていませんので、損益通算をしても還付される税金はありません。
注意!健康保険料が増額される可能性がある
株式の売却損失を繰り越すこと自体は、節税になるのでお得な制度です。
しかし、総合的な節税の観点で考えた場合、確定申告を行うことが必ずしもお得になるとは限りません。
なぜなら、確定申告で損益通算をした場合、投資によって得られた所得が給与や公的年金などの他の所得とともに、保険料の算定対象に含まれることになるからです。
問題になりやすいのは健康保険料
株式投資を申告する際、問題点になりやすいのは健康保険料です。
確定申告を行うことで株式投資で得た所得が一般の所得に加算され、「国民健康保険料」など健康保険料の算定対象額が増えてしまいます。
保険料の算定対象額が増加すると、年間の国民健康保険料が大きく上がる可能性があるので注意しなければなりません。
また、所得金額の増加は、保育料や高額療養費、児童手当やその他の行政給付などに影響が及ぶ可能性だけでなく、扶養から外れる懸念も出てきます。
税額上の還付分 < 保険料等の増額分などが上回る
確定申告をしたことで上記の構図に該当するとなれば、結果的に損をします。
損失額や還付される税額の金額、加入している健康保険の種類、その他の行政手当の受給状況などにより、確定申告をすることが得か損か分かれます。
得になるか損になるかは状況によって異なるので、税務署や税理士さんなどの専門家に相談してください。
確定申告時期が近付くと無料相談会が開催される場合が多いです。
混雑するので、できれば無料相談会前に税務署で聞いた方がいいと思います。
大損したら確定申告を検討しよう
年間の取引で損失が出ている場合、確定申告は必要ありませんが、確定申告を行うことにより「損失の繰越控除」の適用を受けることが可能です。
損失の繰越控除とは、発生した損失を以後3年繰り越し、次年度以降の所得を減らすことができる制度です。
たとえば、ある年に100万円の損失が出たら、翌年の利益から100万円まで差し引くことができますし、余った損失額は翌年以後3年間差し引けます。
カブスルは一度利用したことがあり、節税になりました。
損失の繰越控除を利用すると、大きな損失が出たときに翌年以降の大きな節税につながります。
なお、確定申告を行うと給与所得などを含めた所得が全体に上がるので、 健康保険料などの増額に繋がる可能性がある点には注意してください。
税金が下がっても健康保険料が上がると損になるケースがあるので、確定申告をした方が本当に得になるかどうか、事前に税理士などに相談しましょう。(健康保険料などの増額などに注意)
分離課税と総合課税
株式の所得に対する課税方法には「分離課税」と「総合課税」があります。
- 分離課税とは、ある特定の所得のみを分離して、他の所得とは合算しない課税方法です。
株式については分離課税が認められています。 - 総合課税は、いろいろな所得を合算して課税する方法です。
配当控除を受けることできます。
「特定口座 源泉徴収あり」の場合、分離課税となり他の所得と合算されません。
★ 自分で申告する場合。
分離課税方式を選択すると、他の所得と合算されず、一律の税率(所得税15%、住民税5%、合計20%)が課されます。
総合課税を選択すると、給与所得などの他の所得と合算された金額に対して税金が課されます。
この場合、累進課税方式が適用され、所得の金額が上がれば、税額が上がる可能性があります。
総合課税を選択すると配当控除を受けることができます。
ただし、注意点等もありますので下記の記事などを参考にしてみてください。
配当控除を考えている人は注意!All About
申告分離課税と総合課税の選び方
申告分離課税と総合課税は、確定申告の際の「申告書」を使い分けることによって選べます。
- 分離課税方式を選択するなら
確定申告書の第三表「分離課税用」という書類を作成しなければなりません。
特定口座の源泉徴収あり/なしでも、これを提出することによって分離課税が適用されます。 - 総合課税方式を選択するなら
「確定申告書」という書類の第一表、第二表を作成して提出します。
申告時に間違わないようにしましょう。
参考までに
国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用します。
2024年にマイナポータルと連携して、株式投資の確定申告を行う流れについて撮影しました。
各項目について詳しく説明しているワケではありませんが、全体的な流れを掴みたい方はこちらをご確認ください。
もし、必要なのに確定申告をしなかったらどうなる?
国民には納税義務がありますので、確定申告を怠るとペナルティが課されることになります。
たとえば、期限までに申告と納税をしないと税務署から申告納税の督促が来ますし、本税だけではなく附帯税(延滞税・延滞税)も追加で納めなければなりません。
- わざと虚偽の申告をしたケースのように悪質な場合、重加算税の対象
- 申告しなかった場合、無申告加算税の対象
- 申告内容が誤っていた場合、過小申告加算税の対象
- 納付期限を過ぎた場合、延滞税の対象
悪質な「脱税」については、刑事事件の対象です。
実際に2007年8月、FXの取引による利益を脱税した主婦が逮捕され、懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決になった事件も起こっています。この時の脱税額は約1億3,900万円と大規模な脱税でした。
知って頂きたい事として、あなたが株式投資で得た利益は「証券会社」から「税務署」へ報告されています。 誰が・いつ・どの程度の利益が出ているか、税務署は把握しています。
特定口座の源泉徴収ありを選択していない方は、きちんと毎年確定申告をしてください。
納税は国民の義務ですので、株で得た利益は しっかりと納税しておきましょう(  ̄∇ ̄)
「特定口座 源泉徴収あり」であれば確定申告をしなくても問題ありません。
しかし、「特定口座 源泉徴収なし」や「一般口座」なのに申告をしなかったら(年間の売却益が20万円を超えた場合)、税務署からお尋ね(問い合わせ)が来て、加算税・延滞税を余分に支払うことになりかねません。
(参考)株式投資の確定申告について相談したいときは?
確定申告で不明点があった場合、税務署に相談してみましょう。
どの程度の相談に乗ってくれるかは、相談内容と担当者の度量によると思います。
まずは電話で相談可能かどうかを確認されることをオススメします。
また、確定申告時期が近付くと無料相談会が開催される場合が多いです。
混雑するので、できれば無料相談会前に税務署で聞いた方がいいと思います。
税務署や無料相談会で相談を断られたら?
一部の相談会では「株式譲渡益に関する相談はできません」としているところがあるようです。
その際は、税理士さんに相談しましょう。
税務相談は、有償無償を問わず税理士資格を持っていないとできません。
※税務署職員など一部例外あり
個人のスキルを売買する「ココナラ」では、税理士さんが税金の相談を受けていますので、そちらを利用するのも選択肢の一つです。
マイナポータルと連携して確定申告をラクにする
特定口座を開設していると発行される 特定口座年間取引報告書。
確定申告の際、そこに書かれた数値を入力していく必要があります。
IPO投資の場合、口座開設数が多いので、入力が面倒かつ入力ミスをすることも。
すべての証券会社ではありませんが、e-私書箱とマイナポータルを連携させることで、確定申告時に情報を読み込んでくれるので、入力がラクになりミスもなくなります。(株式投資の記録だけでなく、ふるさと納税や医療費控除などにも)
Youtubeにて、特定口座(e-私書箱)とマイナポータルの連携方法を紹介しています。
マイナポータルに対応している証券会社
マイナポータル(e-私書箱)に対応している証券会社のうち、IPOの主な幹事となる証券会社です。(2024年1月18日時点)
証券会社 | 対応 | 証券会社 | 対応 |
---|---|---|---|
マネックス証券 | SMBC日興証券 | ||
SBI証券 | SBIネオトレード証券 | ||
楽天証券 | 岡三オンライン | ||
松井証券 | 岡三証券 | ||
auカブコム証券 | 岩井コスモ証券 | ||
野村證券 | GMOクリック証券 | ||
大和証券 | 大和コネクト証券 | ||
みずほ証券 | DMM.com証券 | ||
東海東京証券 | 丸三証券 | ||
LINE証券 | 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 |
マイナポータル(e-私書箱)に対応している証券会社は、徐々に増えている印象です。
e-私書箱は収入関係(給与の源泉徴収票など)や控除関係(生命保険、社会保険、ふるさと納税など)ともマイナポータルを通して連携できますので、利用されると確定申告の作業がラクになるかなと思います。
e-私書箱と連携した証券会社
マイナポータルのログインは次の2通りでログインできます。
- ICカードリーダライタで認証する
パソコンと接続してリーダライターにマイナンバーカードを置いて認証する - QRコードで認証する
スマートフォンでマイナンバーカードを読み取って認証する
個人的なおすすめは、ICカードリーダライタによる認証です。
理由としては、スマートフォンではマイナンバーカードの読み込みに失敗することがあるため。
XMLファイルに対応している証券会社
なお、e-私書箱に対応していない証券会社でも、一部の証券会社ではXMLデータを提供しており、ファイルをe-Taxに読み込ませることで、入力の手間を省くことができます。
XMLファイルに対応している証券会社のうち、IPOの幹事となる証券会社です。(2024年1月18日時点)
証券会社 | 対応 | 証券会社 | 対応 |
---|---|---|---|
マネックス証券 | SMBC日興証券 | ||
SBI証券 | SBIネオトレード証券 | ||
楽天証券 | 岡三オンライン | ||
松井証券 | 岡三証券 | ||
auカブコム証券 | 岩井コスモ証券 | ||
野村證券 | GMOクリック証券 | ||
大和証券 | 大和コネクト証券 | ||
みずほ証券 | DMM.com証券 | ||
東海東京証券 | 丸三証券 | ||
LINE証券 | 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 |
XMLファイルも手入力に比べると圧倒的に入力作業がラクになりミスもなくなります。
特定口座 源泉徴収ありの場合、ベターな選択は確定申告しないこと!
元税務署職員の平井 拓さんに「株式投資における確定申告でベストな方法はありますか?」と質問したところ、ベストな選択はケースbyケースになるので難しいとおっしゃっていました。
特定口座 源泉徴収ありなら、確定申告が原則 不要なので、無申告(確定申告をしない)がベター(最善ではないけど比較的良い)だとおっしゃっておりました。
こちらの記事はカブスルが書いた原稿を基に、元税務署職員の平井 拓さんに監修・リライトを行って頂きました。(※マイナポータルの説明以外)
監修者プロフィール
元税務署職員 平井 拓さん
12年勤務した税務署を退職し、ライターとして活動してます。
税務署時代は資産課税部門に所属しており、相続税・贈与税・所得税が専門でした。
脱税は嫌いですが、節税は好きです。
少しでも税金を身近に感じていただける文章をお届けします。
平井さんはマネーの達人で税金に関するコラムを執筆されています。
初心者にも分かりやすいコラムが人気ですので是非チェックしてみてください!
カブスル限定のお得な口座開設タイアップ企画を行っています。