高配当株の減配、優待株の優待廃止に注意
株式投資は、売買の差額の利益(キャピタルゲイン)を得るほか、保有株に応じて現金がもらえる「配当金」、もらって嬉しい「株主優待」があり、個人投資家に人気があります。
- 配当金は、企業が事業で得た利益の一部を株主に還元するもの
- 株主優待は、保有企業から商品券や割引券、お米などをもらえる仕組み
配当株や優待株は人気があるので買い注文を集めやすく、また長期保有を目的とする投資家も多く、株価が下がりづらい傾向にあります。
これらの人気を支えているのは「配当金」や「株主優待」。
ところが、配当金の支払いや株主優待は 投資家に約束されたものではありません。
配当金の減配または廃止、株主優待の改悪または廃止などにより、株価が下落するリスクがあることも考慮しておきましょう。
目次
高配当株や優待株は人気がある
配当金が、どれくらいお得にもらえるのか?を表す指標に「配当利回り」があります。
配当利回りは、投資金額に対していくら配当金をもらえたか?を数値化したもので、配当利回りの数値が高いほど投資金額に対するリターン率が高く人気です。詳しくは下記にて。
株主優待は、ダイドーなど商品の詰め合わせセットをもらえる企業や、優待割引カードがもらえるものに人気があります。
各企業ごとに特色があるのでもらって楽しく、優待ファンも多いです。(カブスルの妻もファン)
人気が高いってことは株価も高い。割高になっていることも
配当利回りが高い高配当株や人気の優待株。
雑誌などに取り上げられる機会が多く、注目を集めやすいです。
ということで、投資家に買われやすく株価は上がります。
株価が上がることはもちろん良いんですが、株価が高いか?安いか?を示す指標は どんどん割高になっていきます。割安度と投資効率を示す指標はこちら。
ワンポイント
- PER (株価収益率)
現在の株価が企業の利益水準に対して割高か割安かを判断する目安。
数値が低いほど割安 - PBR (株価純資産倍率)
現在の株価が企業の資産価値(解散価値)に対して割高か割安かを判断する目安。
数値が低いほど割安 - ROE(自己資本利益率)
株主としての投資効率を測る指標。外国人投資家が重要視。
数値が高いほど魅力的
これらの数値を同業他社と比較することで、相対的に割安か?割高か?投資効率は良いか?を判断できます。
ためしに冷凍食品を扱う企業2社。
自社商品詰め合わせセットの株主優待がある日清食品と、優待がないニチレイを比べてみます。
指標 | 日清食品 (2897) |
ニチレイ (2871) |
---|---|---|
PER | 36.6倍 | 18.6倍 比較して割安 |
PBR | 2.82倍 | 2.01倍 比較して割安 |
ROE | 5.89% | 11.75% 比較して魅力的 |
上記の指標だけを見ると、ニチレイの方が日清食品より割安度が高く投資効率が高いといえます。
IFISスコアで同業他社との立ち位置を確認
参考までにマネックス証券では、IFISスコアでカンタンに同業他社と比較した立ち位置をグラフにて確認できます。
さきほどの日清食品(2897)のIFISスコアです。
割安性は同業他社(グレー)に比べて低い、16というスコアになっています。
自分で同業他社と比較してもいいですし、このグレーのグラフと比較するのもカンタンです。
割高株は売られやすい
割高株は、割安株と比較して売られやすいです。
理由のひとつとして、キャピタルゲイン(売買の差額の利益)の旨味がないから。
割高なので上値の余地が低く、差額の利益を得づらいので、キャピタルゲイン狙いの投資家に見向きされません。
先日、日経新聞でPBRごとの下落率を表にしたものが掲載されておりましたが、PBRが高い(割高)ものほど下落率が高い傾向にありました。
配当金が無配、優待株が廃止されたら株価はどうなる?
やっと本題です(汗)
前置きが非常に長くなってしまいましたが、高配当株や優待株が割高であるにも関わらず、買われている、または売られない理由は、配当利回りが高いから、または魅力的な株主優待がもらえるから。
ただし、わたしたちが証券会社やYahoo!ファイナンスで見ている配当利回りや株主優待は過去の実績や予想です。
実際に配当金と株主優待がもらえるかが判明するのは、決算後。
決算時に利益がでていれば、株主にこれらを還元できますし、利益がでていなければ内容の見直し、または廃止もありえます。
さて、高配当株や優待株は実施していない企業に比べて、株が買われやすく割高だと説明してきました。また、割高な株は売られやすいとも。これらの株価を支えていたものがなくなれば・・・
- 配当金
- 無配:保有者にかなりのインパクト。株が売られる
- 減配:減配額と業績によるが、売られやすくなる
- 株主優待
- 廃止:保有者にインパクトあり。株が売られる
- 改悪:内容と業績によるが、売られやすくなる
特に無配や優待の廃止は、割高株のホールド(保有)になり、売られやすくなります。
参考までに
配当金の減配や株主優待の改悪は珍しいものではありません。
※配当金がゼロになる無配は珍しいです。
2020年2月におこったコロナショックでは業績が悪化する企業が増え、減配や株主優待の内容変更が発表されています。
(マネックス証券で見られるニュースより)
有名どころでは、すかいらーくが中間配当を無配、株主優待の贈呈金額を48%~67%減額。
米国の機関投資家は、コロナ禍の状況において、配当金を株主に支払うより従業員の雇用を守るよう促しております。日本でも同様の動きになると思われます。
業績はチェックしておこう
配当金や株主優待の原資は事業による利益です。
配当金や株主優待目当てで投資を行う場合は、業績チェックを欠かさないようにしましょう。
カブスルの妻は優待好き。
株主優待の内容はよく見ていますが、業績はチェックしません…
カブスルが代わりに業績をチェックしています(汗)
マネックス証券の銘柄スカウターは、過去10年分の業績の推移をチェックできます。
今年度の業績だけでなく、業績の推移をチェックすることで、持っていて安心か売った方がいいかの判断材料になるかと思います。
無配になった日産の例。業績をみれば予測はできた
日産は、2020年2月13日に業績の下方修正と期末配当の無配を発表しました。(中間配当金は10円)
翌14日に赤丸で囲ったように株価が大きく下げ、その後もずるずると株価を下げています。
チャートを見ると、無配発表前から株価は下げていました。その理由は業績。
(マネックス証券の銘柄スカウターより)
営業利益をみると、2019年は悲惨な状態に。
この業績をきちんとチェックしていて、「やばい!」と思った人は無配の発表前に売却しているでしょうし、どんな状況でも配当金をもらえると思って保有していた人たちは、大きな株価の下落を経験していることと思います。
日産のように、配当金は投資家に約束されたものじゃありません。
過去に実績があるから今回も もらえるとは限らないことが、お分かり頂けたかなぁと思います。
日産も毎年のように増配していましたが、業績悪化により無配に転じたんです。
減配リスクを減らすには?
減配リスクを減らすには、企業の体力(財務面)を見ておく必要があります。
- 配当性向は高いが、手元の現金が少ない企業
- 自己資本比率が低くて、借金が多い
これらの企業は、配当金の原資となる現金が手元になく、減配リスクが高まります。
自己資本配当率でチェックすると安定性が高い
株式投資であまり なじみでない指標に「DOE」があります。
自己資本配当率と呼ばれ、自己資本の中から配当金として還元する割合を示した指標です。
DOE(自己資本配当率) = 配当総額 ÷ 自己資本
DOEは、当期利益と配当金の関係性を示した指標である「配当性向」より安定性が高い指標として、注目されています。
配当金を頑張って出している企業の水準は、DOE 2%~3%が目安。
減配リスクが高い業種
配当金の減配リスクが高い業種としては、景気の影響を受けやすい「景気循環株」があります。
鉄鋼、化学、紙パルプなどの素材産業や工作機械などの設備投資関連など。
これらの業種は景気が悪化すると売上が急激に減少しやすいため、収益が落ち込むと配当金が減額されるリスクが高まります。
減配リスクが高い | 減配リスクが低い |
---|---|
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特に資源価格や為替の影響を受けやすい業種は、価格変動による利益の不安定さにより減配になりやすいです。例えば、原油価格が下がると石油会社の収益が低下し、減配となります。
参考までに
景気循環株は好景気の時は配当金も高くなるので、配当金の推移も上下に振れやすいです。
画像は日本製鉄(5401)の配当推移
株主優待のクオカードは廃止されやすい
個人投資家を増やすため、株主優待を新設する企業があります。
自社商品や自社サービスを展開している企業だと株主優待を発行しやすいですが、そうではない企業の場合、クオカード(QUOカード)を発行することが多いです。(2024.1.25調べで391社が発行)
クオカードは株主優待として手軽に発行しやすい半面、手軽に廃止しやすいです。
同じ株主還元の配当金は無配や減配すると、投資家の反感を買いやすいです。
一方、株主優待は配当金と比較するといろいろと理由をつけて廃止しやすいです。
株主優待廃止時には「公平な株主還元の観点から見直し」といった文言がよく使われます。
最初から分かっていたはずで、優待を廃止する際のお決り的文句です。
クオカードは、株主優待を発行しやすく、また廃止しやすいという特徴を活かして?個人投資家を集めるエサとして利用される場合もありますので注意しておきましょう。
クオカードの額面(価格)が、優待をもらえる購入価格に対して高い場合(優待利回りが高い)は注意が必要です。
参考までに
クオカードの優待新設から早い期間で終了した企業
- 文教堂(9978)
- 2021年9月にクオカードの優待を新設
- 100株でクオカード300円分(年2回)。保有株数により額面がUP
- 当時の株価(73円)で優待利回りは8.21%に
- 2023年4月にクオカードの廃止を発表
似たような話で、Amazonギフトカードの優待新設から早い期間で終了した企業も
- ラストワンマイル(9252)
- 2023年10月にAmazonギフトカードの優待を新設
- 1株で1,000円分、100株保有で1万円分(二期連続保有)(検証動画)
- 当時の株価(4,370円)で1株保有だと優待利回りは45.7%に
- 2024年7月にAmazonギフトカードの廃止を発表
(理由は「株主優待制度の目的の一つであった知名度向上に貢献できたと判断したため」)
保有株がクオカードを発行する分には影響ありませんが、クオカードを発表したことにより新たに対象企業を買う場合、株価が急騰していることがあるので、高値掴みになりやすいようです。
なお、クオカードの発行には現預金が必要ですので発行体の企業の現預金を確認しておくと、継続して発行できるのか?の判断材料となります。
企業側の都合が良いクオカード
クオカード(QUOカード)は発行する企業側にとって、とても都合が良い株主優待です。
先ほど挙げた株主優待を廃止しやすいといった特徴に加えて、配当金よりも支出が抑えられるといった特徴があります。
- 配当金
所有株数に応じた配当金の支払い - クオカード(QUOカード)
〇〇株数以上の保有で〇〇円分のクオカードを進呈
例えば、下記の優待を発行している企業の場合、
★ 100株以上の保有でクオカード500円分の優待あり。配当金はなし。500株の保有
- 配当金はゼロ
- 500円分のクオカード
★ 配当金は1株あたり5円。株主優待はなし。500株の保有
- 配当金は2,500円
- クオカードはなし
株主優待は配当金と違い、持ち株数に応じて比例して受け取れない場合がほとんどです。
また、企業側からみてもその分の支出を抑えることが可能となっています。
(クオカードなら発行手数料を考えても、配当金より安い支出で済む)
なお、クオカード(QUOカード)は受け取る株主も、配当金と比べて約20%の税金がかからない為、人気があります(本来は雑所得として確定申告が必要な場合あり)
大株主にとっては所有株数に応じてもらえる配当金の方が嬉しいですが、優待発行すると個人投資家が群がるため、株価が上昇。その恩恵は受けられそうです。(わたしだったら、その株価上昇時にすべて売却しますけど)
分散投資でリスクを軽減
高配当株狙いで、一つの銘柄に集中投資をしている方をみかけます。
好調な時はいいんですが、業績が悪化し配当金の減配、またそれによる株価が下落した際に、大きな痛手を受けます。
配当金狙いの投資を行う際は、いくつかの企業の株を買う分散投資がオススメです。
仮にひとつの企業が減配になり収益が減っても、ほかの企業の配当金でカバーすることが可能になります。
また、配当金の原資は純利益なので業績のチェックは必須です。
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