テクニカル分析とはどんなもの?

「もっと投資の勝率を上げたいな・・・」
「買い時と売り時を見極めるにはどうしたらいいのだろう?」

投資家であれば誰でも、1度はこのような悩みをもつ時がありますよね。

そんな時に、自分の投資パフォーマンスを向上させる頼もしい味方となってくれるのが「テクニカル分析」です。

「えっ、テクニカル分析ってなに?」

という初心者の方々にも分かりやすいように、今回は投資判断の支えとなる分析方法について詳しく紹介します。

こちらのページは、テクニカル分析に詳しい方に寄稿いただいた記事になります。

目次

  1. 1 投資の分析方法は大きく分けて2通り
  2. 2. テクニカル分析の種類
  3. 3. テクニカル分析のメリット
  4. 4. テクニカル分析のデメリット
  5. 5. テクニカル分析は本当に有効なのか検証してみよう
  6. 6. まとめ

1 投資の分析方法は大きく分けて2通り

投資の世界における分析手法には、大きく分けると以下の2通りに分類されます。

・過去のデータや値動きの規則性から最適な売買のタイミングを探る「テクニカル分析」
・経済の動向や金融政策などの情報から最適な売買のタイミングを探る「ファンダメンタル分析」

1.1 テクニカル分析

過去のデータをもとに、今がどのような相場かを分析するテクニカル分析はいくつかの数値を計算すると自動的に売買のタイミングがわかります。

一例としては、一定の短期間における平均的な価格のグラフと、一定の長期間における平均的な価格のグラフが交わる点を「相場が変わるタイミングだ!」と判断するのがテクニカル分析です。具体的なイメージは後ほど図を交えて解説いたします。

一定期間の平均値などのように、過去の値動きのデータから指標となる数値を計算したりすることで「売買のタイミング」を見極めるのがテクニカル分析ですね。

1.2 ファンダメンタル分析

一方、過去のチャートの形やグラフではなく、世界経済の動向や金融政策、企業の経営成績など、「経済の変化」や「その投資対象の本質的な価値」に重点を置くのがファンダメンタル分析ですね。

例えば株式投資の場合であれば、その会社が出している純利益の額からPER(株価収益率)と呼ばれる指標を計算して、その株を「今の価格買うべきかどうか」を判断することが出来ます。

このようにテクニカル分析にせよファンダメンタル分析にせよ、何かの指標を計算することは両方ともあります。2つの分析方法における一番の違いは「過去の値動きパターン」に注目するか収益性などの「本質的な価値」に注目するかどうか、ということになりますね。

どちらも投資判断を行う上で大切な分析ではあるのですが、2つとも紹介をしようとすると読むのも大変になってしまいますので、今回の記事ではテクニカル分析についてのみ詳しく取り上げることにしましょう。

2. テクニカル分析の種類

テクニカル分析は非常に様々な計算指標が存在するので、すべてを参考にするのはとても大変です。それぞれの指標の性質を理解して、自分の投資スタイルに合ったもの用いるようにして下さいね。

2.1 テクニカル分析はトレンド系とオシレーター系に分かれる

テクニカル分析の種類を大きく分けると、以下の2つに分類することができます。

・相場の上昇トレンド・下降トレンドを見極める「トレンド系指標」
・相場のトレンド転換点を見極める「オシレーター系指標」

2.2 トレンド系のテクニカル指標

トレンド系のテクニカル分析は主に、「今の相場に上昇トレンドや下降トレンドが発生しているのか」を知るために使います。

「株を買ってみたはいいけれど、このまましばらく株価が上がっていくのかな?」

という悩みをもったときに、株を持ち続けるか、いったん売るべきかを決める判断材料となってくれるわけですね。

上昇トレンドが発生している(発生した)と分かれば、しばらくは株を持ち続ける方が良いと判断することが出来ます。

逆に今持っている株がまもなく下降トレンドに入りそうな場合は、すぐに手持ちのポジションを清算した方が良いかも知れませんね。

2.3 トレンド系の中でもメジャーな指標例

トレンド系の指標の中でいくつか有名なものと、その特徴を簡単にご紹介します。

2.3.1 移動平均線

移動平均線

先ほどの例のように、一定の短期間と長期間の平均価格をグラフ化して、その交わりを見て上昇トレンドと下降トレンドの発生を見極めます。テクニカル分析の中でももっともシンプルなものの1つながら、参考にしている投資家は多いですね。

2.3.2 MACD(移動平均収束拡散法)

MACD(移動平均収束拡散法)

移動平均線に似ているものの、移動平均の取り方を応用したモデル。指数平滑の考え方を用いることで単純な平均ではなく「直近のデータ」をより重視した平均値を算出するので感度良く相場の動きに反応をしてくれます

2.3.3 ボリンジャーバンド

ボリンジャーバンド

正規分布や標準偏差といった「統計学的なアプローチ」で分析する移動平均線の応用モデルです。一定期間の移動平均線と実際の株価の動きと離れ具合から、今のトレンドを把握するのに用います。

「株価の値動きは正規分布する」という前提をもとにすると、株価は約68.2%の確率おいて移動平均線の値から±σ(標準偏差という値)分の範囲に収まり、約95.4%の確率において±2σ分の範囲に収まるという考え方をすることが出来ます。

値動きの範囲を想定できるのもこの指標の良さですが、±2σのラインを超えるような場合は後で紹介しているオシレーター系指標のように「買われ過ぎ・売られ過ぎ」状態だと判断する1つの判断材料としても用いることができます。

2.4 オシレーター系のテクニカル指標

オシレーター系のテクニカル分析では、「相場の過熱感」を判断するのに有効な分析方法です。

「ここ最近、この株がすごい人気で値上がり続けているけれど、本当にこのまま上がっていくのかな?」

このように悩んだときに、それが「本来の価値以上のレベルにまで株価が上がってしまっている(バブル状態)」のかどうかを見極めれば、初心者の方がよくやってしまいがちな「高値掴み」は避けることが出来るようになります。

2.5 オシレーター系の中でもメジャーな指標例

相場の転換点を見つけるためのオシレーター系指標にもいくつかの種類がありますが、有名なものを2つほど例として挙げておきます。

2.5.1 RSI(相対力指数)

RSI(相対力指数)

RSIでは株価の値動きにおける「上がる力」と「下がる力」の相対関係を見るので、一定期間の値動きにおける「上昇幅」の割合を計算します。

連日にかけて株価の値上がりが続けば「上がる力」が強くなっており、逆に値下がりが続けば「下がる力」が強くなっている状態になりますね。

株価は一時的には異常な高値になったり、安過ぎる価格で売られたりすることはありますが、いつかは適正水準に戻っていくものです。

この「株価は適正水準にいずれ戻る」という市場の原理をもとに、株価が行き過ぎたタイミング(異常な高値・安値)での逆張りトレードを行うときにRSIは有効な指標であると言えるでしょう。

3. テクニカル分析のメリット

上でご紹介したいくつかの指標で見た通り、テクニカル分析では値動きの様子を指標として計算することで、その状態を数値化してしまいます。

この「値動きの状態を数字に落とし込む」という性質が、分析をする上で強力なメリットを生み出します。

3.1 過去のデータだけをもとに、簡単に売買の判断が出来る

テクニカル分析は指標となるものの値(一定期間の平均値や、RSIのような計算するもの)を売買のサインとして判断をしますので、一定の計算をすれば自動的に「買うべきか売るべきか」の判断が出来ます。

これはつまり、同じ指標を同じ期間設定で用いれば、投資を始めたばかりの初心者の方でも相場に精通した上級者の方であっても同じタイミングで売買のサインが出てくるということですね。

テクニカル分析は投資対象における過去のデータさえあれば、簡単に誰でも「今が買うべきか、売るべきか」の判断が出来るようになるのです。

3.2 将来の予想や、経済の知識などを判断材料に含まなくても良い

テクニカル分析は過去のデータにおける値動きだけに注目をするので、経済動向のことは一切考慮する必要がありません。指標となる数値を計算すれば、とにかく売買の判断をすることが出来ます。

もちろん一切考慮する必要がないとは言いましたが、テクニカル分析で求めた「最適な売買のタイミング」を参考程度にとどめて、経済動向に合わせた投資をするという戦略も悪いことではありません。

そのようにテクニカル分析とファンダメンタル分析を両方重視する方々にとっては、テクノファンダメンタル分析という分野もあります。

しかしながら、いきなり両方の分析を行うのは大変なことですし、まずは客観的に(機械的に)売買サインが出されるテクニカル分析を習得される方が、最初はシンプルで分かりやすいのではないでしょうか。

4. テクニカル分析のデメリット

テクニカル分析には機械的に売買サインが出されるという良さがある反面、デメリットにもなり得る性質があります。

4.1 過去に有効だったテクニカル指標が、今後も必ず有効という保証はない

テクニカル分析は指標となる数値を計算する際には過去のデータを用います。

ここで注意しなければいけないのは、「過去の値動きにおいて有効だった」からと言って「これからもずっと有効である」という保証はどこにもないという事です。

例えばテクニカル分析をした結果、過去3年間のデータで大変投資成績が良いテクニカル指標があったとしましょう。しかしながら、それが次の1年間も同じ結果になるとは限らないのです。

それは経済の変化や為替相場などにも影響され、投資対象における「相場の性質」が変わってしまうことがあるからですね。

ある意味では当たり前のことですが、相場そのものが変わってしまったら同じテクニカル指標が正しく機能するかはわかりません。

4.2 経済の変化による急激な値動きには対応できない事がある

もう1つの弱点は、テクニカル分析は「一定期間の値動きのパターン」からデータを算出するので、「今日の値動き」がどれだけ急激なものであったとしても、その変化がすぐには表れにくくなってしまう所にあります。

このため、いきなり相場が大暴落をしたとしても、すぐに「売り」のサインが出てくるわけではありません。テクニカル分析は急激な相場の変化に対応しにくいという弱点があるのです。

5. テクニカル分析は本当に有効なのか検証してみよう

そのようにメリットもデメリットもあるテクニカル分析ですが、「実際、テクニカル分析だけで投資をしても勝てるの?」という所が気になりますよね。

テクニカル分析について解説するサイトはたくさんありますが、それらの有効性を正しく示している情報はあまりありません。

みなさんには、今回ご紹介したテクニカル分析の有効性をしっかりと知っていただきたいので、ここで検証してみることにしましょう。

5.1 テクニカル分析の中でも有名な移動平均線は本当に使えるのか

先ほどテクニカル分析の例として挙げたもののなかで、最も知名度が高いと思われる「移動平均線」に従って取引をするのは本当に有効なのかを確かめてみましょう。

移動平均線は一般的に日足データの場合は短期を5日、長期を25日と設定する事が多いと思われますが、この期間の取り方1つでも売買サインが出るタイミングは大きく変わってきてしまいます。

そこで今回は「従来の短期と長期の組み合わせ」の結果と「他の組み合わせ」をいくつか検証して比較してみることにしましょう。最適な短期と長期の組み合わせは、どのようなものなのでしょうか。

検証する上でのルールと方法は以下の通りです。
個別銘柄で検証してしまうと銘柄によっての差が激しいので、市場全体を反映する日経平均先物を対象としましょう。

検証対象:日経平均先物
検証期間:2015年1月2日から2017年12月27日(日中日足期近データを使用)
検証方法:独自に開発したシミュレーションツールを使用
検証内容:移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロスに従ってすべて売買を行う

5.2 テクニカル分析(移動平均線)だけで3年間投資し続けてみた結果は?

3年間投資し続けてみた結果

日経平均先物を投資対象として、2015年から2017年末までにおける3年間の投資結果は上の表の通りです。

3年間もの間に35回の売買サインが出現したものの、それらの勝率はわずか31%に過ぎませんでした。トータルの収支も「-283万円(2830×1000円)」という赤字の結果で終わってしまっています。

ここまでテクニカル分析の魅力や種類についてお話はしてきましたが、約300万円近くの損失をだすような投資戦略はまったく参考になりませんよね。

果たして、移動平均線やテクニカル分析なんて使わない方がマシなのでしょうか?

5.3 なぜこのような結果になったか

この結果だけを見て、「テクニカル分析は使えない」という判断をするのは賢明ではありません。

なぜならば、この「3年間の投資によって283万円の損失が出た」という結果は「短期を5日間、長期を25日間で設定する」場合の結果に過ぎないからです。

一般的に「短期は5日間、長期は25日間を用いる」からと言って、それに明確な合理性や根拠は本当にあるのでしょうか?

相場のトレンドを判断するための移動平均線を正しく使いこなすためには、その投資対象の「相場」に合わせた期間設定をする余地が残っているのです。

5.4 移動平均をとる日数を変えると投資成績は劇的に改善する

試しに、5日間刻みで短期と長期の期間設定を変えた場合のいくつかの組み合わせにおいて、3年間の投資成績を比較することにしてみましょう。その結果がこちらです。

3年間の投資成績を比較

灰色は先ほど示した従来の「短期5日間、長期25日間」の結果を、黄色は比較的に好成績を残した期間設定の例をそれぞれ示しています。こうして見比べてみると、期間の取り方を変えた場合の差は明らかですね。

従来の「短期5日間、長期25日間」で設定した移動平均線を参考にすると勝率は31%にしかなりませんが、「短期を30日間、長期を40日間」で設定したモデルでは勝率が52%にまで向上しています。利益額を見ても、260万円(2600×1000)の利益が得られていますね。

期間の取り方によってはかなり結果が左右されるものの、適切に設定された移動平均線の売買サインに従うだけでも、これだけの利益が出せるのです。

この結果から、投資対象に合わせた期間設定を考えることはかなり重要であることが分かりますね。

また、正しく使えばテクニカル分析だけで3年間というそれなりに長い期間においても通算して勝ち越せるということです。

5.5 移動平均線のようなテクニカル分析は結局使えるの?

上の結果で見ていただいたように、テクニカル分析のような「一定の明確な売買のルール(今回であれば移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロス)」に従うだけである程度は投資で勝つことが可能になります。

実際に30日間と40日間の移動平均線だけを頼りに投資をしても、3年間で260万円もの利益を積み上げることに成功していたのですから。

5.6 テクニカル分析の有効性は、指標の設定値に依存するので注意!

ただし、「一般的に用いられているパラメーター(短期5日間、長期25日間)」を使っていては、勝率も利益額も安定せずに通算で負け越していましたね。ここは要注意です。

移動平均線にせよ、他のテクニカル分析の指標にせよ、いずれも計算するデータの期間設定によって、売買のサインが出るタイミングはガラッと変わります。

例えば移動平均をとる期間が短ければ短いほど、直近の値動きには柔軟に反応しやすくなります。その分「ちょっとした値動き」に過敏に反応してしまうことが多くなります。

その結果、誤ったタイミングで売買のサインが出現しやすくなってしまうのです。

逆に移動平均をとる期間が長ければ長いほど、直近の値動きよりも過去の値動きを重視することになるので大局的な流れをつかむことが出来るようになります。

しかしその反面、相場の急な動きには特に弱くなり、目の前の相場変動についていけずに適切な売買サインを出し損ねることという事態に繋がってしまう恐れがあるでしょう。

このように期間が短過ぎても長過ぎても問題が生じてしまうので、テクニカル分析を行う際はその投資対象に合わせた「バランスの良い期間設定」をすることが大切になります。

6. まとめ

経済動向にまったく関係なく、過去から現在までの値動きを見るだけの「テクニカル分析」について説明させて頂きました。

今回は、テクニカル分析にはどんなものがあるのかを簡単に紹介し、その中の1つである一番シンプルな「移動平均線」を3年間使った場合の投資結果を検証してみました。

先ほどのような、一定期間の平均的な価格を見るだけの分析はテクニカル分析の中でもかなり初歩的で粗削りなものですが、それでも50%を超える勝率とそれなりの利益額が得られています。

さらに、移動平均線だけではなくいくつかのルールを組み合わせることで、誤った売買サインの出現を抑え、勝率も利益額もさらに向上させることは十分に可能であると言えます。

一般の個人投資家は不利になりやすい情報戦などではなく、過去の値動きをもとに売買を行うテクニカル分析は、特に初心者の方にとっての強力な武器となるのではないでしょうか?

テクニカル分析に関してもっと知りたいと思った方はカブスルの他の記事でも解説をしていますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

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